熱いアイスと冷たい僕
近所のスーパーで半額のバニラアイスを買った
どうやら賞味期限が近いらしい
家に帰って買い物袋からアイスを出す
しくしく
しくしく
誰かが泣いていた
半額のバニラアイスだ
なんで泣いているのかと聞くと
おれはもう少しで廃棄になるところだったんだ、でもお前が救ってくれた、ありがとう、アイスとして、立派な最後を遂げられる、ありがとう、ありがとう
と言った
暑苦しいな、アイスのくせに。
でも、嫌いじゃない。
そんなこと言うなよ、廃棄なんてさせるもんか、おれはバニラアイスが大好きなんだ、半額のバニラアイスはおれが全部食ってやるよ
と言ってみた
バニラアイスはわんわんと泣いた
お前いいやつだな、違う出会い方をしてたら友達になれてたよな
何言ってんだと思ったが
もう俺たち友達だろと言っておいた
そんなことより早くアイスを食べたかった
泣かせるなよ、おれはお前に食べられて本望だ的なことを言ってる最中だったが食べた
塩っぱかった
熱で少し柔らかくなったバニラアイスは涙の味がした
これはこれで
美味しいかもしれない
おわり